シーナ・アンド・ロケッツ(以下S&R)。ラモーンズ・ファンにとっては80年の初来日で前座を務めたバンドという説明も不要なほどヒストリカルな日本のバンド。このバンドにもう一人、熱いラモーンズ・マニアが存在するのをご存知だろうか。CJ RAMONE来日公演の前座も決定した、ギタリスト渡辺信之さんだ。長いこと温めてきた夢=ラモーンズのカバー・バンドHey Ho Let's Go!をやることを遂に実現させた渡辺さんのマニアぶりを紹介します。

●まず始めに渡辺さんの洋楽ロックとの出会いを教えてください。


──俺は福岡の田舎町、直方(のおがた)市で生まれて育ったんです。いきなり宣伝だし話が逸れるけど、4月17日に直方のユメニティホールでS&Rがライブをやるんだけど、S&R初直方着陸はもちろん、ロックコンサート自体たぶんここでは初めてじゃないかな。そんな田舎町で俺がS&Rやラモーンズで感じた生のロックのライブの素晴らしさをiPod世代に伝えられたらと思うよ。で、洋楽との出会いは親父が音楽好きで小さいステレオがあって、映画音楽とかトム・ジョーンズとかを聴いているそんな環境だったなぁ。俺が学校へ行くようになった頃にはアニメの主題歌を歌っているような小学生だったけど、その頃、姉がビートルズを聴き始めて、一緒に耳にするようになった。それが洋楽を聴くようになった最初のきっかけかな。

●それは渡辺さんがいくつの時ですか?

──俺は小学校3年生くらいで、今のうちの息子と同じだな、いや息子はハイハイからやっと立てるようになつた頃ラモーンズをならすとラジカセにしがみついて腰をふっていたな。

●いきなり余談ですが、渡辺さんの小学生の息子さんも、もうドラム叩きますもんねぇ。

──そうそう、ラモーンズを(笑)。それで俺が小学校5年生の時に、そのビートルズ・ファンの姉と映画館に来たビートルズの映画を見に行ったんだ。「ビートルズがやってくる ヤア!ヤア!ヤア!」だったんだけど、その中でメンバーがファンの女の子に追いかけられる場面があって、子供ながらに(へぇ、こんな世界があるんだぁ)と思ったことを覚えているよ。

●ビートルズは映画で視覚的に入っていったわけですが、音も好きになりましたか?

──もちろん。聴かされるまま好きになっていたと思う。その次に好きになるのは日本のフォークやニューミュージックなんだけど。例えば、チューリップ、吉田拓郎、井上陽水とか。姉の弦高の高いガットのギターで練習したよ。でも相変わらずテレビの主題歌も歌ったりしているんだけど(笑)。「木枯らし紋次郎」のテーマとかね。歌うこと自体が好きだったみたい。

●あれは、渋くてカッコイイ曲でしたよね。テレビのタイトル・ロールごとかっこいいみたいな。

──そうそう、あの曲はいい。上条恒彦。この話は絶対しなければいけないと思って今日来たんだよ(笑)。
で、中学に入るとキッス、エアロスミスに流れていくんだけど、そのうちローリング・ストーンズの「LOVE YOU LIVE」ってアルバムが出るんだよ。これが、凄いインパクトでね。黒っぽいというか。当時は黒っぽいというニュアンスもわからないんだけどね。とにかく今まで聴いてきたものとは違う、何かやばいサウンドだな、という印象だけはあったよ。

●中学生でストーンズのグルーヴにグッとくるのも渋いというか早いですよね?

──そうだね。ちょっとだけ早いかもしれないね。でもそんなにのめり込んではいなかったよ。中学の学園祭ではチューリップを演奏してたし。中学生になって洋楽にも邦楽にも強い友達が出来てロックに目覚めたよ。その友達の家には、九州発信のバンド、サンハウスやS&Rもあったりして、始めてS&Rにも触れるんだけど、その頃はS&Rもかすった程度(笑)。あとで、テレビに出演しているS&Rを見たり、ラジオのエア・チェックをしたりしてテープに録音したりしてだんだん入っていった感じかな。今もその時のテープあるんだよ。S&Rの「ユー・メイ・ドリーム」とストーンズの「ミス・ユー」が同じテープに入ってたりするんだよ。

●そういうテープは貴重だから絶対取っておくべきです。そんな渡辺さんは、どうやってラモーンズと出会うんですか?

──東京に出てきて、S&Rのライブの手伝いをする事になってスタッフをやり始めたんだよ。それがS&Rとの出会い。鮎川誠という人は、音楽の引き出しを凄く沢山持っている人だったから、もちろんラモーンズの話もでたし、ブルース、パンク、ニューウェーヴとかいろんな話を聞く機会も沢山あったよ。その頃の俺はラモーンズにはまだぜんぜん興味がなくて、どんどんブルースの世界にのめり込んでいたというかね。今でも一番好きなのはジョン・リー・フッカーかな。
で、ラモーンズは時々聴き直したりしたけど、やっぱり本当に好きになったのは、ライブを見てからだね。CJになってからだったけど、ライブを見た瞬間「このライブは子供から爺ちゃん、婆ちゃんまで全員に見てもらいたい!!」と思うくらい魅力があったんだよ。ストーンズは初来日全部見ているんだけど、そういう風には思わなかったんだ。でも、ラモーンズを見た時のあの輝き方は本当に素晴らしかった。180度見方が変わったよ。何かのスイッチが入ったというか。とにかくあの日に打ちのめされたんだ。こんなに美しいもんだったんだぁ、と。CJの入ったチッタからだからちょっと遅いけど。

●でもラモーンズがライブ・バンドとしての評価が高まってきたのって、今思えばCJが入った90年代からだったと思うんですよ。だから、その時に渡辺さんのように衝撃を受けてバンドの良さを知るというのは、この時期のこのライン・ナップだったからありえたのかなと最近は思うんですよ。ちなみに渡辺さんは何回くらいライブを見ているんですか?

──ライヴ・バンドとして固まって評価も高まるのはその頃という見方もあるかもしれないんだけど、さかのぼってDVDを見たりして思うのは、できたてのほやほやの頃からラモーンズの魅力はかわないなってとこ。ライヴはCJが入った頃のチッタを2回、ラスト・ライヴも見たな。最後はちょうどツアーの帰り道で名古屋のショウを見れたから、そこも見たけどもう泣いた。その時の音源もカセットで持ってるんだ(笑)。

●あ、またカセット・テープ登場(笑)。渡辺さんはライブ音源好きですよね? 78年のベルリンや、いろんな所のライヴ・ブートを聴きまくってる印象あるんですよ。よく私に「今、○年のライヴ音源を聴いてる」メールを送ってくれるじゃないですか? それを読むとやっぱり渡辺さんはミュージシャンで聴き方が違うんですよねぇ。ラモーンズをこんな風に聴いているんだぁと。気持ちを1曲1曲に入れ込んで聴いてるんだなぁと、いつも思ってるんですよ(笑)。ところで、渡辺さんはメンバーには会ったことはあるんですか?

──S&RのレコーディングでNYに行った時にジョーイが主催するライヴ・イベントがリッツというクラブでやっていてみんなで見に行ったよ。DEE DEEがでっかいどくろのセーターを着て女の子両側に肩組んで歩いているところに遭遇したりしたこともあるけど、ちゃんと会えたのはチッタの楽屋でね。『モンド・ビザーロ』のCDに全員からサインを頂きました。ジョーイと握手した時に思ったね、人間の眼じゃないな、異星人? 妖精? 性別さえ越えた存在に見えたよ。ジョニーの印象はシーナが楽屋でTシャツをきちんとたたんでいるところを見たらしく、その印象が強いなあ(笑)。マーキーはビデオで見る印象そのまま。CJは以外とシャイで真面目な人間なんだろうなぁと。ジョーイはさっきも言ったけどオーラというかあったかくて、でっかい人間離れしたエネルギーを持っているなあと感じたよ。

●渡辺さんはベースも弾いていましたが、DEE DEEやCJはベーシストとしてどう見えますか?

──俺は元々はギター弾いてたんですよ。最初の10年はサイド・ギター。その頃メンバー・チェンジが続いて脱退したりなどいろいろあってベーシストをまた見つけなきゃになった時に「もう、俺ベース弾くわ」って言って。で、2008年にオリジナル・ベーシストの浅田さんがカムバックしてまたギターに戻ったんです。DEE DEEは天才の領域だね。まず曲が素晴らしいし、プレイも荒っぽいように見えるけど、曲がカッコよく見えたりする為に全力でプレイしていたと思う。曲に一番マッチする音を選んで、例えば同じラの音でも、どのポジションのラをチョイスするかというセンスも抜群だし、何より生き様がそのまま音に出ているところが、ロックだよね。CJはDEE DEEの後任という大役を見事に成し遂げたね。「1-2-3-4」のカウントを叫ぶだけでも最初は大変だったんじゃないかな(笑)。ラモーンズを加速させたCJの音も好きだよ。

●では、ちなみに好きなベーシストとして一人あげると?

──DEE DEEとCJを別にするとしたら、元ストーンズのビル・ワイマンだね。最初から凄いけど、ラモーンズ・マニアでストーンズ嫌いの人も70年代後半のストーンズのライヴを聴いたらびっくりすると思うよ、彼には。

●なるほど。ところで今回CJの前座も務めるHey Ho Let's Go!というカバー・バンドは、どんなきっかけで結成されたのですか?

──ラモーンズのカバー・バンドはいつかやりたいとずーっと思ってたんだ。ベーシストに転向しても、ベースでもいいからラモーンズはずっといつかはやりたいと思ってて。俺、S&Rでコーラスをやるから、車の中ではよくラモーンズを発声練習代わりに歌っているから、歌詞も覚えちゃってさらに歌いたくなっちゃってね(笑)。

●楽しそうですね…車内(笑)。

──うん、楽しいよ(笑)。歌詞も覚えたから、カバー・バンドやりたいぞっていう思いもピークに達したし。そしたらタイミングよくシーナの誕生日パーティー・ライブをやることが決まったから、「よし、ここでやろう!」 と決めたんだよ。S&Rのメンバーもラモーンズならみんな大好きだから誕生日のライブとしてはいいだろうってね。

●私はその日ラモーンズのカバーだけをやるバンドだとは思っていなかったんですよ。S&Rというと、私の印象はブルースとロックン・ロールだから、いろんなカバー曲を渡辺さんが余興でやるんだろうと思ってたんです。そしたらこのバンド名(Hey Ho Let's Go! : 息子さん命名)だし、しかもラモーンズだけをやるとは夢にも思っていなかったから…びっくりですよ。(あれ?ストーンズやらないんだぁ)って。そんなに一直線だったなんて。まるで「It's ALIVE」か「LOCO LIVE」って感じでしたよ。

──当たり前だよ。一直線だよ、一直線(笑)。俺の中でラモーンズはね、もうジャンルだし、バンドだし、文化なんだよ。ワン・アンド・オンリー。S&Rでも時々ラモーンズのカバー「チャイニーズ・ロック」やら「ラウド・マウス」やらやったりしてたんだけど、でも1曲か2曲しかやれないからストレス溜まるわけ。どうせならせめて30分はやりたいんだよ、ラモーンズだけで。

●(爆笑)。それ、S&Rじゃないですよ。

──だって1曲2曲だけ「HEY HO!」とか言ってもさぁ、せめて30分ガーっとやらなきゃラモーンズじゃないでしょ? それがラモーンズでしょ?

●その通りです(笑)。

──でしょう?(笑)。それでやらせてくれるとこがあるなら俺は飛んで行くよって感じ。

●素晴らしすぎます(笑)。私はあのバースデイ・ライブの日に見させてもらったんだけど、あれっきりで終わりにしようと思ってたでしょう?

──うん。でもユキさんが「良かった、楽しかった」って言ってくれたし、自分でも歌ってて凄く気持ちよかったから、やっぱりもう1回やっちゃおうかなという気にはなっちゃって(笑)。もうすぐ来日するCJの前座が決まって鮎川さんも「やればいいよ」って言ってくれたから、よしってね。

●いやぁ、楽しければいいじゃないですか?

──このバンドで誘ってくれるなら夏のフジ・ロックでもなんでも出たいくらいだよ(笑)。

●ぜひ、やってくださいよー(笑)。

──テレビもラジオも気休めにもならないメッセージ・ソングばかりでしょう? ラモーンズのコピー・バンドの方がよっぽど健全だと思うよ。

●そうですね。でもラモーンズはバンドとして存在しないので、今日渡辺さんの話を聞きながら、今後ラモーンズの魅力とされるライブ・パフォーマンスのエネルギーはCDやDVDだけで伝わるんだろうか…とちょっと不安になったりしたんですが、どう思いますか?

──ラモーンズの魅力は確かにライブ・パフォーマンスなんだけど、ラモーンズの場合はCDの音もライブそのものだよ。

●渡辺さんはブートレッグを聴き込んでいますが、どんな基準というか気分でその日聴く音源を選んでいるんでいるんですか?

──S&Rって歴史の長いバンドだから、周りの知り合いがいろいろと、こんな音があったとか言って、集めて持ってきてくれるわけ。だから俺の周りにはいろんないいブート音源がありがたいことに集まっちゃうんだよ。
それでね、お薦めはこれ、これ。持ってきたんだよ(とカバンからブートCDを取り出す : 82年のMy Father's Place,Roslyn LongIsland NY july 20 1982)これはいいんだよ。今ここで聴かせたいよ全曲。ここでインタビュー中断してさ(笑)。

●(爆笑)。渡辺さんから届くブート音源評価メールというか、中継メールというか、それを読んでいると「このブートの良さはここにある」というのが明確に伝わってくるんですよ。ただ単に曲が良いではなく、この曲をジョーイがこんな感じで歌うからこの音源は最高みたいな(笑)。かなり熱いし、しかも聴きこんだ内容の感想なんで、短いなりに的確な(笑)。その評価の基準はどこなんですか?

──(声を大にして)ライブだよ、ライブ。耳からエネルギーが伝わってくるんだよ。ライブの臨場感も耳で体験出来るんだよ…って、あぁそんな言葉じゃ評価が小さすぎるんだよなぁ(笑)。だからこの音はメンバーひとりひとりの凄さがガンガン伝わってくるし、その先にある4人のエネルギーがかたまりで聞こえてくるんだよ。とにかく凄いんだよ、特にコレは!!

●(じっくり見ながら)私、コレ聴いたことあるかなあ? しかも82年てラモーンズ弱ってる時期なんですけど…。

──(声を大にして)ぜんぜん、弱ってないんだよ。ジョーイの声なんて凄いよー!! 俺、最初から涙がどわーっと溢れてきて「スゲー」を連呼してたよ。このブート聴いてなかったらカバー・バンドもやっていなかったと思うよ。それだけ人を動かす凄いライブなんだよ!! この音源の1曲目が「ロックンロール・レディオ」だったから、俺たちもそうしたんだもん。とにかくこのブートはファン・クラブのみんなは聴いた方がいいよ。

●(圧倒されながら)へええ。書いておきます。ちなみにブート音源はどのくらい持っているんですか? ブートの音源を聴く楽しみというか衝動はやっぱり、エネルギーを得たいというところですか?

──エネルギーもらっているし、生きていくのに必要なんですよ。マニアの人みたいに沢山持っているわけでしゃないよ。ラモーンズのブートは10枚くらい。ストーンズとかはもっとあるかなあ。とにかくこのライブ音源が魅力満載でベストなんだよ。

●了解です、しっかり紹介しておきます。ところで今回のバンド、Hey Ho Let's Go!について教えてください。

──ベースの穴井仁吉さんは忙しくてラモーンズとは離れていた時期もあるけれど、ドラムの東川元則さんは昔MODELやFIFI & THE MACH IIIっていうラモーンズフォロアーのバンドをやっていたくらいだから、もうどっぷりラモーンズ筋金入りだし、エイト・ビート叩かしたら最高だしで、4時間しかスタジオ入ってないけどいい感じだったよ。

●MODELは見に行ってました。(大野篤氏の)ライダースの前身バンドですよね。日本人ばなれしたバンドで、最高でしたよ。

──彼は(ドラムだから)後ろから「ジョーイはそんな風に歌ってないよ」とか言うんだよ(笑)。でもドラマーが理解してくれていれば、息だけ合えばばっちりだよ。二人ともS&Rのメンバーだったこともあるし。

●ライブで演奏する曲のセレクトはどんな感じに?

──歌いたい曲を歌うけど、土台はこのブート音源と「It's ALIVE」かな。

●CJの来日公演の前座に決定しましたが、意気込みとか見てほしいポイントはありますか?

──ライブのエネルギーが伝わればなあ。俺たちを通したラモーンズの音が伝わればいいなあ、と。ラモーンズの良さとラモーンズ好きが伝わればいいなあと思うよ。

●映画『END OF THE CENTURY』は見ましたか?

──見たよ。ちょっと引きずっちゃったなぁと思ったけど、いろんな事がバンドにはあるよ。でもあんな状況の中でもあれだけの音を出してきたわけだから、そこは素晴らしいなと思ったよ。「KKK」の話とかはショックだったよ。あれは普通の人だったら、なかなかうまくいかないと思うし俺には無理だと思ったりするけど、それを越える何があったんだと思うよ。長く付き合っていると、その人のいい所も悪いところも見えてくるわけだから、当人じゃないとわからないこともあると思うよ。長く続いているバンドはそれなりにあると思うよ。

●いやぁ、S&Rも長いじゃないですか。長いなんてもんじゃない、日本のロック・ヒストリー。

──だからきっとジョニーなんて「まだやってんのか」なんて笑っていると思うよ。

●そうかもですねぇ(笑)。でもそのジョニーにその部分でモノ言えるのは続けている鮎川さんだけだと思ったんですよ私。当時よく楽屋でお見かけしたし、鮎川さんは続けることを選んだバンド・ライフだからジョニーと話は合わないだろうなぁと、横で眺めながら(ジョニーの気持ちが揺らぐような事を何か言ってくれないかなぁ)なんて思って見てましたよ。私も続けて欲しい派でしたから。

──俺はリミットは考えないなあ。体力の限界はあるけど、気持ちの部分ではないんじゃないかなあ。ラモーンズやりたければ、アコギ1本でも出来る。ラモーンズは曲がいいから。自宅でもよく酔っ払って歌っているよ。

●なんだか楽しそうなだんらん風景が目に浮かびますねぇ。それに息子さんにもいい影響与えてますよね。小学生でエイト・ビート叩くもんなぁ。ところで、渡辺さんにとって1番存在が理解できるラモーンズのメンバーは誰ですか? ジョーイですか?

──いやぁ、ジョーイは殿上人みたいで無理かなあ。ユキさんの本読んでそう思った。俺はCJかなあ。何かのDVDでCJは「俺は最後までラモーンになれなかった」みたいな事書いてあるのを読んで、俺もバンドは違うけど歴史あるバンドにあとから加入したという部分では、CJの気持ちはわかるなあ。ライブが終わって楽屋にいても、ゲストのお客さんはみんなジョーイやジョニーの方に行き、自分の所には誰も来ないみたいな。俺が楽屋に行った時も一人でぽつんとしているところも見たよ。そんなポジション的なところは理解できるよ。でもCJ無しではラモーンズは完結しないよね、これはユキさんの言葉だけど。

●なるほど。ところでS&Rといえば、80年の来日で共演していますが、鮎川さんやシーナさんからラモーンズのエピソードを聞いたことはありますか? あったら教えてください。

──鮎川さんはラモーンズを見てアンプを「マーシャルにしよう」と思ったらしいよ。俺は91年かなあ? チッタの翌日だったかな、シーナと鮎川さんとジョーイと来日中のANTHRAXのライブを見に一緒に行ったんだよ。それでANTHRAXを楽しそうに見ているジョーイのことを俺はずっと見てたよ(笑)。

●(爆笑)。ANTHRAXじゃなくて、ジョーイを…。

──その時にジョーイに握手してもらった(嬉しそうな様子)。その後だったけかなあ、ジョーイが鮎川さん家に行ったんたけど、俺も行ったんだよ、実は(笑)。ジョーイがリビングの壁にがーっとサインしたりしてね。家にあがる時に「靴ぬぐの?」と聞いたりね。昔ながらの一軒家だから鴨居が低いところもあって、かがんで部屋に入って行ってたよ。S&RのCD聴いてもらったり、とにかくハッピーな時間でジョーイに釘付け状態だった。ジョーイが目の前にいるよぉ、みたいな(笑)。

●またまたファン状態ですね(笑)。でも渡辺さんの良いところはそこなんですよね。プロのミュージシャンなのに、好きなバンドに対しての思いが純粋でさらにおごりも全く無いところ。私が最初に渡辺さんにグッときた瞬間が、東京の大型レコード店のマーキーのサイン会のイベントで、そこに息子と二人でちゃんと並んで登場し「S&Rのベーシストの渡辺と息子です」と言って握手とサインをもらっていた時。ミュージシャンて同士だったりするから、立ち位置がファン側にはいないことも多いじゃないですか。でも、ちゃんとこんな律儀な人もいるんだなぁと驚きましたよ。

──誰かに頼むこともできたと思うけど、息子には「サインはちゃんと並んでもらうんだよ」という経験をさせた方がいいと思ったんだよ。ちゃんとすじを通さなきゃいけないところには、通せよっていうのをね。だから、普通のことだったけどね。息子は本当にラモーンズ・マニアだし。

●いや、そうはわかっていても…列に並んでいる姿には私はえらい感動しちゃったなぁ。

──だから楽屋に行けているという瞬間なんて本当に感謝しているよ。しなきゃいけないよね。
前にDEE DEEがソロで来日して原宿のアストロホールでやった時に息子と行って…ロコモーションやってたよね?

●え? 息子さんあの時いたんですか? だって何歳?

──3歳(笑)。終わって楽屋に挨拶に行ったら、息子を見たDEE DEEがさっと立ってケータリングからポッキーを2本もってきて「はい」って。うわぁ、この人いい人だぁ、危ない感じだけどぉみたいな(笑)。さっきまで親分みたいに座ってて、あんまり近寄らない方がいいかなと思ってたけど会えて良かったよ。

●ちなみに3歳でDEE DEEに会った息子さんは、今何を聴いているんですか?

──やっぱりラモーンズが一番好きだし聴いてるよ。意味もわからずDDTだの「ビート・オン・ザ・ブラット」だの歌っているし。あとはキース・リチャーズのソロも俺と一緒に聴いてて好きになったけど「これ遅いね」って(笑)。ラモーンズばかり聴いてたから。

●でわ、今日の気分で選ぶ、好きなアルバムと曲を教えてください。

──う〜ん、ファーストかなぁ。でも「アディオス・アミーゴス」「モンド・ビザーロ」も良く聴くんだけど…。
う〜ん、難しいなあ。今日はこれっていうんでいい? 今ライブでやるのが楽しいから「ロッカウェイ・ビーチ」。あとは「ライフ・イズ・ア・ガス」かなぁ。この曲には特別なエネルギーを感じるなぁ。ジョーイの声は通るんだけど、意外とキーが低いから俺の声とはあわなくて実は歌いずらいんだけどね。

●OKです。最後に渡辺さんにとってラモーンズって?

──ただの石ころのダイヤモンドなんかよりはるかに輝いている存在。生きるためのエネルギー源。このラモーンズのエネルギーに気が付いてない人が多すぎるよ。本当にグッドでハッピーなエネルギーなのに。今はジョーイの声がテレビのCMに乗って聴ける。オン・エアーされていることも素晴らしいよ。世の中にジョーイの声が流れているというのが。ああいうとこからも気づいてほしいと思うよ。ラモーンズの素晴らしさを。

●アツイ想いやこだわりをたっぷり聞かせてもらい楽しかったです。ありがとうございました。CJ来日公演での演奏楽しみにしてます。

──え、もう終わり? 話し足りないよ(笑)。

●私もですよ、続きはまたどこかで話しましょうよ(笑)。

★★

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インタビュー / FCスタッフ:カイチョー・ユキ(yuki kuroyanagi)
取材場所 / 東京・高円寺にて(2010年1月)
写真 / FCスタッフ:sumie(取材&オフ)
協力&ライヴ写真 / まおらう


テキスト及び写真 : 畔柳ユキ / Ramones Fan Club Japan (c)RAMONES FAN CLUB JAPAN
ALL TEXT & Photos by (c)yuki kuroyanagi & (c)RAMONES FAN CLUB JAPAN

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